24時間耐久レース参戦記 その3
私の後の第九走者のHIDE氏、第十走者のEAST氏が走る頃には
空も白んで来た。 後から知った事なのですが、 HIDE氏の2順目の走行の時に下りバックストレートの後のヘアピンでスピン! 後続車がうまく避けてくれたので大事には至らず、 その後無事に走りきったのだが、 ピットにいた自分たちはそんなことには一切気付いていなかった。 朝のピット風景。 また、朝方には濃い霧も時々発生し、 私の時は下りバックストレートが霧でヘアピンが見えなくなったり、 EAST氏の走行時には霧の為、イエローフラッグが出る場面もあった。 左ヘアピンを駆け抜けるEAST氏 ホームストレートを駆け抜けるEAST氏と それを見守る親方。 そして2順目、最終走者の青山氏が走行中にレース全体を左右するアクシデントが起きた。 他の車両がコース上にオイルを撒き散らしてしまい、赤旗中断となったのだ。 参加全車両はピットに戻され、待機を命じられる。 その間ドライバー意外は車両に触れることは許されず、作業は一切出来ない。 だが、それ以上に辛いのはドライバーが集中力を持続させることだった。 いつレースが再開するか分からないまま待たなければならないドライバーには集中力を持続しろ、ということ事態が無理だった。 赤旗によりレース中断が一時間以上にも及ぶと さすがにピット全体にも不穏な空気が流れてくる。 オフィシャルに聞いてもレース再開がハッキリせず、 一部ではこのままレース終了の噂まで流れた。 しかし、青山氏は終始リラックスした雰囲気でこの赤旗中断を乗り越え レースの再スタートを無事にクリアーした。 そしてここで青山氏が劇的なシーンを演出してくれた! 始めRX-7で走っていたチームが途中からTカー(スペアカー)の33Zを投入してきていた。 33Zはさすが最新鋭の車両だけあって他の車両に比べて遥かに安定した走りを見せていた。 ホームストレートから第一コーナーの進入でそれは起きた。 33Zから僅かに遅れてホームストレートを駆けて来る赤い彗星号 ホームストレートを半分過ぎた頃、33Zに半分喰らい付いていた。 まさかっ!? 第一コーナー進入でのブレーキング勝負! イン側に付いたGTI-Rのブレーキランプは明らかに33Zより遅く光り、 そのまま第一コーナーに33Zよりも先に進入して行った!! 思わず おぉっ!! とその場にいたメンバー全員が声を上げてしまった。 しかも青山氏はその後も33Zをドライバーチェンジでピットに入るまで押さえ続けたのだ! ドライバーの腕次第でGTI-Rでも33Zに勝てることを示した劇的な出来事だった。 いよいよ3順目の走行順に入り、三度第一走者の雀鬼ー氏がコースに入る。 だがここでまたしてもブレーキトラブルが発生。 やはり下りのバックストレートからの右ヘアピンのアプローチでブレーキ抜け、 スピン! HIDE氏の時と同様に事なきを得たが 今度はパッドが熱で変形してしまい使えなくなってしまっていた。 緊急ピットインし事無きを得たが これで予備のブレーキパッドが無くなってしまった。 そしてレースも終盤に差し掛かるラスト3時間を切った頃、 赤い彗星号にトラブルが続発し始めた。 3順目、第六走者のキンパル氏からピットに無線が入る。 「ブレーキからジャダーが出る!」 一瞬にしてピットに緊張が走る。 一旦ピットに戻り、フロントパッドの残量やフロントタイヤの状態を確認する。 パッドはまだ有り、タイヤもまだ行ける。 再びキンパル氏の運転の下、GTI-Rをコースを走らせる。 しかし再びピットにブレーキのジャダーが酷くなったことをキンパル氏が無線で伝えてくる。 この時ピットではフロントキャリパーが熱で開き始めたか、ブレーキローターが歪んだのだろうと 楽観視していた。 残り時間を考えてもその程度のトラブルなら ペースを落とせば完走出来ると思っていたからだ。 キンパル氏がブレーキジャダーに耐えながら1時間を走り切り 第七走者のよーへい氏に交代する時に、ブレーキチェックを兼ねてタイヤ交換を施す。 見た目では問題なさそうである。 だが、よーへい氏が走り始めてから暫くすると 仮眠から戻った親方から 「ハブはチェックした?」 と問いかけがあった。 スッカリ基本的なことを忘れていた。 よーへい氏に一旦ピットに戻るように指示し、フロントハブをチャックする。 GTI-Rがピットに止まると同時に塩ちゃん嬢がジャッキでフロントを持ち上げる。 GTI-Rのフロントが持ち上がると 左フロントを大氏、右フロントを親方がチェックする。 右フロントハブにガタが出始めていた。 レースの残り時間は2時間を過ぎていた。 親方を中心にハブを交換するべきか、そのまま走らせるか皆で協議する。 私はここまで来て途中リタイヤは避けたかったので たとえ30分以上作業に時間がかかっても交換することを提案する。 走行不能に陥り、リタイヤするより 作業後の走行時間が1分しかなくても、コース上に残ってチェッカーを受ける方が優先と思ったからだ。 しかし親方からは交換の時間と残り時間を考慮して ペースを落として走り切ろうと意見が出た。 親方としては作業時間で残り時間を消費するより 走りきっての完走を選択したのだ。 この親方の意見に大氏をはじめ、その場にいた大半のメンバーが賛成し、 悩んだ挙句赤い彗星号をペースを抑えて残り時間を走らせる事に決定した。 そしてラスト1時間前の15時。 よりによって私が最終走者になってしまった。 まさか自分が適当に決めた出走順で、最後の走者になるとは思わなかった。 しかもトラブルを抱えた状態で。 最後のドライバーチェンジの時によーへい氏が 「思いのほか振動が凄いですから気を付けて」 と伝えてきた。 私は頷きコースへと走り出した。 しかし、ピットロードを抜けコースインしたと同時に、 車両の状態が尋常では無いことを理解した。 ステアリングは常に振るえ、やや左に切れた状態になっていて フロアー全体も震えており、シートから体に伝わってくるインフォメーションは フロントブレーキとフロントハブだけではなく、リアにもトラブルが有る事を伝えていた。 ピットから無線が入っても振動で車体が振るえる音が車内に充満しており 聞き取ることが出来なかった。 堪らず無線で一方的にピットに戻ることを伝える。 ピットに戻ると大氏がすぐに駆け寄ってきた。 「リアを調べて!フロントだけじゃない!リアにもトラブルが有る!」 と私は怒鳴って伝えた。 すぐに塩ちゃん嬢がピット内からジャッキを持ち出し、リアが持ち上がる。 ミラー越しに大氏と親方が車体の下に潜り込むのが見えた。 ものの数分で塩ちゃん嬢が 「リアドライブシャフトにガタ有り!」 と伝えてくる。 ついで助手席のドアが開き、大氏が 「左のドラシャのデフ側のCピンが無くなってガタが出ているんだ!」 と伝えてきた。 頭の中を「リタイア!?」の文字が走り抜ける。 今度は親方が説明に来る。 親方は 「左のドラシャにガタが出ているが、まだ走れる!」 と伝えてきた。 「ドラシャが抜けることは無い?」 と私は確認をする。 「左コーナーを気を付ければ大丈夫!」 と答えが来る。 ラッキーなことに東コースで左コーナーでキツイのは一箇所だけ。 親方の経験からくる言葉を信じ、 再び私はコースへと戻された。 だが、走り続けるうちにステアリングとフロアーを伝わる振動は 時間と共に酷くなっていく。 連邦軍の本拠地「ジャブロー」を攻略するためにジオン軍の強襲降下作戦が行われた時、 名も無き兵士が空一面を覆い尽くす対空砲火を目の前に 「降りられるのかよ!?」 と叫んだ。 「ゴール出来るのかよ!?」 まさにそんな気分だった。 この時全ての面で私は弱気になっていた。 右フロントタイヤが捥げたらどうしよう? リアドライブシャフトが抜けたらどうしよう? 嫌な事ばかりが頭の中を駆け回る。 勝手にピットインして他のドライバーに代わってもらおうとまで思った。 しかもこの時私の右腕に力が入らなくなってきており ステアリングを握っていることはできても、右腕だけでステアリングを切ることは出来ない状態だった。 無線ではピットが何かを伝えてきているが一部しか聞き取れない。 「...目線......ホームス.........ください。」 目線!? ホームス......ストレート!? おいおい!? こんな状態なのにホームストレートで皆の方に目線を送れだって!? しかし、この聞こえ難い無線から伝わってくるピットの和んだ雰囲気に こんな状態にも関わらず笑ってしまった。 このピットの和んだ雰囲気が逆に私の思考回路の切り替わるスイッチになった。 とにかく車を労わりながら何とかゴールしないと! ついでにピットのリクエストに応えないと♪ 振動で暴れるステアリングを押さえつけ なんとかホームストレートで皆がいる方に目線を送る。 というか、いるらしい辺りで顔を横に向ける程度しか出来なかった。 だが、この要求は一度だけでなく二度目もあった。 正直勘弁して欲しかった。 抑えて走っているとはいえホームストレートでは110Km/h以上で走り抜けるので、震えるステアリングと車体に気遣いながら 第一コーナーの進入へのブレーキングとシフトダウンに精一杯で余裕など無かった。 無線では 「後......」 と残り時間を伝えてきてはいるが、車体の震える音で聞き取ることは出来なかった。 ホームストレートに戻る度に ただ早くチェッカーフラッグが振られることを私はひたすら願っていた。 そしてその時が来た! ホームストレートに入ってチェッカーフラッグが見えた時、全身に鳥肌が立つのが分かった。 チェッカー後他の車両同様に完全にペースを落として第一コーナーをゆっくり走っているとピットから 「無事ゴールおめでとお!」 と無線が入る。 急に無線がハッキリと聞こえるようになった。 その声を聞いた時、一瞬にして全身の疲労感が抜け 目頭が熱くなった。 ユックリとピットに向けコースを回っていくと 各ポストでオフィシャルが24時間を完走した全車両に向けてイエローフラッグを笑顔で振っていた。 フラッグを持たないオフィシャルも笑顔で拍手や手を振っている。 狭いピットの入口を抜け、ピットロードに入ると どこにこれだけの人達がいたのかと思うほど各ピットに人垣が出来ており その全ての人達がピットロードに入ってくる車両に拍手と 「おめでとう!」いう言葉をかけて来た。 ピットロードの人垣を抜け、 RNN14パルサーGTI-Rオーナーズクラブのメンバーが待つ14番ピットに戻った時、 皆の笑顔を見て目頭が再び熱くなり、堪えることが出来なかった。 始めは冗談のような会話から始まった耐久レースへの参戦する話。 少ない時間の中、車両を製作し 参加ドライバーを集めチームを編成し 途中「本当にこれでレースに参加出来るのか!?」と弱気になったり RNN14パルサーGTI-Rオーナーズクラブの各支部からの応援の声にも励まされ 右も左も分からない状態で、全てが手探りであったにもかかわらず 24時間完走! RNN14パルサーGTI-Rオーナーズクラブ全てのメンバーの力で勝ち取った完走だと思います。 本当にありがとうございました。 主催 :エビスサーキット コース :エビスサーキット東コース コース状況:ウエット 所要時間 :22:35’17”823 Lap :742周(トップ差205周) 総合 :15/18位 クラス別 :13/16位 Best Lap :1’15”473
by thirty-satan
| 2006-07-23 13:06
| 車
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